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アラブ最後の王者、マリンレオ
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Column 「最後の王者」
by 栃ノ峰富士

<<序文>>
 今年の8/15お盆休み真っ盛りの夏の日、金沢競馬場に来ていました。おそらくは最後になるであろう古馬のアラブ全国交流を心に記しておく為に・・・。
 ただ、その場には防衛をかけた王者の姿も、また北陸の女帝の姿もなく、倒すべき相手のいない瀬戸内の新帝王が当然のようにタイトルを獲得していった姿がそこにありました。その光景に安堵というよりは一抹の寂しさを禁じえなかったというのが正直なところで、その日起こったいくつかの出来事が更にその思いを強くさせた訳ですが、多分振り返って、アラブの終焉を強く印象付ける日だったいう事になるんだと思います。
 
【セイユウ記念第16回アラブグランプリ 03'金沢】
【セイユウ記念第16回アラブグランプリ 03'金沢】 
『最後の王者』
 マリンレオにはそんなフレーズが似合うような気がします。アラブの王者というと4歳(旧齢)にはもうバリバリで楠賞に勝ったとか出走したという経歴がたいていあって、古馬になっても5〜6歳でハンデに負けるまで王者で居続けてあっさり引退してしまうようなイメージがありますが、この馬が表舞台に登場したのはやっと4歳(新齢)暮れのシルバー争覇。当時東海で飛ぶ鳥を落す勢いのNo1アラブであったブラウンダンディに土をつけたというのが、この馬を知ることになったきっかけでもあります。
 デビューは4歳の5月。素質はあったのでしょうがこの時期からだと条件戦をほぼ順調に勝ち上がり続けても重賞にたどりつくのに一年半かかっているんだから、やはり東海のアラブの層も厚かったという事なんでしょう。
 4歳時(旧齢)に1回、帝冠賞に出走しているのですがこの時は3着。勝ち馬は今では憶えている人も少ないエムエスダイキチ。故障がなければこの先多いに期待できたはずの馬でした。
 やはり東海での同期の筆頭といえばブラウンダンディとイケノエメラルドが挙がるでしょう。両者が早くから活躍していたのとは対照的とも言えますね。という事は全国的にいうとホマレスターライツやワシュウジョージの世代という事になります。ああ、なるほど!世代の層もなかなかだったと思うのと同時にこれらの馬と活躍の年がズレている事にも意外さを感じるのではないでしょうか?ちなみに東海での4歳時にキミノミネフジが負かしている事は私も知りませんでした。(笑)

 さて、実際にワタシがこの馬の存在に気づいたのは先ほどのシルバー争覇でブラウンダンディを負かしたという事実を、荒尾のアラブ大賞典でのブラウンの馬柱を見ているときでして んっ!? と思ったのが初めて。ブラウンより強い馬がいるのかな〜?とその時チラッと思った程度ですぐに忘れてしまったのですが頭の片隅には残っていました。
 結局春先はお休みに入ってしまい、ブラウンとの再戦の機会もなかったので実力は未知数でしたね。

 その頃、福山ではペルターブレーブがついに全国交流で勝ち感動していた頃だと思うのですが、初夏の金沢決戦に休み明け一叩きした彼が福山惨敗のブラウンに変わって登場という事になって、おっ!やっと生で見られるかという感じだったと思います。
 粟津の温泉に宿泊して見に行ってその後、皆でタチの悪い風邪になったのも懐かしい記憶ですが、このレースは福山好走のペルター、ホーエチャンピオン、パッピーケイオーや荒尾勝利のメグミ大王にワシュウジョージの巻き返しがあるかというのがレースの焦点で、さすがに上がり馬のマリンレオはどこまでやれるかというのが大方の見方だったと思います。
 果たしてレースはワシュウジョージの巻き返しにやられたという印象ばかりですが、猛然とアタマ差まで迫ったマリンレオに驚かされたのも強く記憶に残っています。
 さあ、この馬この後どれくらいやってくれるのかな?さらに注目しようと思ったら、秋まで休みになってしまってこの馬の真の強さを掴みかねていたのですが、秋に復帰してからがこの馬が本当の強さを檜舞台で披露して、No1へと登り詰める事になったんですね。
 

 ここから翌々年の福山まで16連勝という敵なしの状態になる訳で、もはやブラウンダンディを倒すだけでなく全国でNo1の存在へと駆け上がる姿には本当に強かったなあという感想ばかりですが、その中でも珠玉のレースをあげるとすれば二つ。

02'/7/2金沢 『第15回アラブグランプリ』
 曇・不良/2100m/本賞金800万円
着順 馬名 所属 人気 タイム
1 マリンレオ 愛知 1 2.15.0
(レコード)
2 スーパーベルガー 金沢 3 2馬身
3 フジナミスペシャル 福山 4 3馬身
4 ペルターブレーブ 上山 5 クビ
5 ワシュウジョージ 兵庫 2 2馬身1/2
 まずは初めて全国の舞台に登場して一年。福山でいよいよ全国の頂点に立って、押しも押されもせぬNo1として金沢に登場したアラブグランプリを他においてないでしょう。
 この時の目玉は、全国的には未だ無名に近かったスーパーベルガーという牝馬が地元で物凄い勢いで勝ち上がってきていたことで、この牝馬と王者マリンレオの対決に胸躍らせずにはいられませんでした。しかし・・・何故か平日開催になってしまった関係で現地に赴く事ができず、我がアラブ観戦歴痛恨の見逃しの一戦となってしまいました。
 レースはその力は真に本物だったベルガーがフジナミスペシャル、ペルターブレーブ、ワシュウジョージ、チーチーキングといった層々たるメンツを相手に抜け出した所を、王者があっさりと捕えてレコード勝ちしたという素晴らしいモノ。
 やはり見たかった・・・・・。この後更に強さを増していくベルガー。そしてサラへと挑戦の矛先を転じたマリンレオ。順調に行っていたらどこかでこの対戦を再度見られたはず・・・。その後この幻影をずっと追いかけて叶わなかったのは本当に残念なことです。

【セイユウ記念第15回アラブグランプリ 02'金沢】
【セイユウ記念第15回アラブグランプリ 02'金沢】 by くもぎりまる


03'/1/1笠松 『第31回東海ゴールドカップ 』
 晴・良/2500m/本賞金1000万円
着順 馬名 所属 人気 タイム
1 マリンレオ 愛知 1 2.44.9
2 ブルックリンガイ 笠松 8 3馬身
3 ホウシュウタイム 笠松 2 アタマ
4 バンドオンザラン 名古屋 4 2馬身
5 マルカバリー 笠松 9 4馬身
 そしてマリンレオにアラブでの敵がいなくなった結果、最後にして最大の見せ場はサラに挑戦できるようになって2戦して快勝した後の笠松最大の重賞・元旦の東海ゴールドカップへの挑戦。正直、前走でのバンドオンザランとの差や2500mという距離にさすがにマリンレオでもホウシュウタイムには勝てないだろうという思いが強かった一戦。
 しかし、ぷらっとこだまで行った元旦の笠松で見たモノは想像を遥かに超える強いアラブの王者の姿でした。伸びあぐねるホウシュウタイム置き去りにして短い直線を豪快に伸びてくるその走りは心にぐっと迫るものがありましたね。
 アラブを愛し見てきたものにとってサラを相手に勝つシーンというのは言葉には表せられない感じ入るものがあります。鞍上の主戦山田JKにとっても連勝した全国交流では宇都騎手に乗り替わっていた為、このマリンレオとのコンビで初めて手にしたビッグタイトルに感慨無量といった表情だったのが印象的でした。

 その後、休みを挟みつつサラに挑戦を続けながら、連覇を目指した福山では古豪サンバコールに一敗地に塗れましたが、思い出の金沢では山田JKを背に連覇を果たし王者健在の姿を見せてくれました。
 しかし、この後は脚部不安との戦いになってしまい、その姿を競馬場に見せてくれる事なく引退となってしまった訳です。
 
【第31回東海ゴールドカップ 03'笠松】
【第31回東海ゴールドカップ 03'笠松】 by おーた
 ワタシが実際にマリンレオを生で見たのはわずか7戦しかありません。いつも強いなあという映像で見ているイメージばかりでしたが、40勝や9割近い連対率といった数字よりも感じることはその名の持つ何とも言えない雰囲気に相応しい「栗毛の綺麗な涼しい王者」だったなあという事です。
 さっと表舞台に登場してからはずっと連勝。敵なしのその姿は、本当の意味でのライバルがいなかったからかなとも今思います。凌ぎを削るという戦いが見たかった感もあり、先に書いたベルガーとの対決などが続けばそういう部分を演出していけたのかなあと思ったりして、その点だけがちょっと心残りではありますが、十二分にアラブの王者として活躍してくれた事に感謝して心からお疲れ様と言いたいですね。 
 この時代、種牡馬としての活躍は期待できないでしょうがゆっくりと余生を送ってもらって、「俺達はこの馬の凄い走りを生で見ているんだぜ!」と言えるような再会がいつかできればいいなと思います。

Thanks!海洋獅子


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