(2005.3.20up) 3982番目の訪問者です
最後の宇都宮競馬観戦
県営宇都宮競馬は1948年
(昭和23年)
以来56年間親しまれてきたが、2004年度の開催をもって廃止されることが決まっている。
1992年以降売上が低迷し続け、1998年度からは単年度収支が赤字となり1998年〜2003年度までの累積赤字は41億円。2005年度まで開催すると県の一般会計から補填しなければならなくなる。そういった状況から経営継続は困難という判断が下された。
開催最終日は2004年度年度末となる2005年3月14日。
残念ながら仕事を休めそうもないので最終日の観戦はあきらめ、重賞レースも組まれている前日の日曜日に出かけてみることにした。
最終日というと足利競馬開催最終日に出かけた経験があるが、「最終日だとこんなに沢山の観客が入るのか。なんだかなあ。。。」とその賑わい振りに複雑な気持ちを持ち帰った記憶がある。だから、最後の最後を見届けたい気持ちは無論あるけど、まだ普段着の装いの日に足を運び自分なりの「さよなら」を言って来るのも良いかな、と思いつつ出かけた。
休日寝ぼすけな私は、昼過ぎにJR宇都宮駅から出る無料送迎バス最終便への乗り継ぎの自信が無く(苦笑)、いつからか東武鉄道利用で西川田駅に入るコースを好むようになっていた。各駅停車によるのんびりコースであります。
出発時間に融通が利くのと、栃木駅あたりでは日光方面に向かう旅行客と一緒になったりするのでちょっとした小旅行気分を味わえるという点がこの経路を好む理由かな。まあ、運賃が若干安いというのもある。
道中省略で西川田駅着。歩いて競馬場近くまで来ると、一般の歩道を出走を終えた馬が厩舎へと引かれて行く姿が見えた。これも宇都宮競馬ならではの光景だよね。
道路に面したでっかい開催案内の看板は次開催の日付が入る部分がポッカりと空白になっていて寂しい。
入場ゲート脇には懐かしの重賞勝ち馬達の貴重な写真が飾られており、開催終了間近のメモリアルモードに入っていることを意識させられる。
入場ゲートをくぐり進んで行くとパドック脇の出店から「焼きそば100円〜!」という声が響き渡って来た。午後になりメインレースが近くなると、3店が同時に焼きそば100円セールを始めるのは宇都宮競馬の名物の一つだよね。腹も減ってたので迷わず列へ。
焼きそばをすすりながら改めて場内を見渡す。久々に脚を運んだ宇都宮競馬場だったけど、客の入りも良く活気あるように見えた。広々とした場内と、どこからでも見やすいパドック。今日でこの風景を見るのも最後か、と思うと寂しいなあ。「久々ですよ。こんなに入っているのは。」と、場内で出くわした友人コロ氏が一言。以前は重賞のある日曜日はこれくらいコンスタントに入っていたけどなあ。。。
2004年度 第22回宇都宮競馬第3日目(2005/3/13)
早川順一騎手
リーディング首位を走るのは早川順一騎手。彼はこの最終開催の初日である3月11日に地方競馬通算2,500勝を達成しており、翌日には表彰式も行われた(昨日だわ)。デビューから15,351戦目にしての記録達成で、地方競馬の現役騎手では14人目、歴代では28人目となるそうだ。
早川騎手は1984年4月にデビュー。主な重賞勝鞍は『北日本アラブ優駿』
(89'ゴールドクリス)
、『平成5年度とちぎ大賞典』
(93'マロンデューク)
、『北関東ダービー』
(95'エヌケーオージ)
、『とちぎアラブ大賞典』
(97'グランドカリム)
、『しもつけオークス』
(99'ジョージバンダ)
、『かもしか賞』
(02'セイエイシェーン)
、『北関東オークス』
(04'ウイニングマミー)
などなど。
彼はどちらかというとパドックなどでもキリッとした表情を崩さない感じの雰囲気の人なんだが、でも時たま見せる笑顔は非常に優しい感じ。根強いファンも多いかと。本日も本馬場入場の際「順ちゃん、頑張って〜!」と控えめな掛け声。控えめ加減が早川騎手のイメージと反しておらず好感(笑)。
リーディング2位に付けている鈴木正騎手も栃木競馬には無くてはならない存在ですね。昨年12月31日に通算2000勝を達成しているこちらもまたまた名手。
宇都宮の元気男・内田利雄騎手の名前が上位5位に入って無いのがちょっと寂しいですなあ。内田騎手は昨年地方競馬通算3,000勝を達成しており、成績・人気とも栃木競馬ではナンバーワンの騎手であるのは説明の必要も無いかな。
宇都宮競馬リーディングジョッキー
(第21回宇都宮競馬終了現在)
順
位
騎手名
所属
1着
2着
勝率
連対率
1
早川順一
早川厩舎
115
78
17.4%
29.2%
2
鈴木 正
中村厩舎
98
67
17.4%
29.3%
3
山口竜一
田畑厩舎
75
72
16.4%
32.2%
4
森 泰斗
佐藤厩舎
73
78
12.6%
26.1%
5
平澤則雄
菅原厩舎
63
72
12.3%
26.3%
本日のレースプログラムですが、足利競馬廃止の際と同様、特別戦に栃木競馬にゆかりのあった馬たちの名前を付けたレース名が設定されております。
第9レース『タケデンマンゲツ特別』と第10レース『サラノオー特別』の2つ。
タケデンマンゲツは89'年に中央競馬デビューで、92'年に栃木競馬に転入。平沢騎手を背に地元の『足利記念』『八汐賞』などの重賞を勝ち、遠征競馬では『南部杯』
(92’水沢)
を優勝している。その時の2着は栃木競馬の名牝ベラミスキーだった。93'年にはハシルショウグンの2着だった『川崎記念』、そして『帝王賞』挑戦といった出走履歴が残っている
(結果はハシルショウグンの14着)
。
サラノオーの方はもうちょっと古い時代の馬で、86'年に『しもつけさつき賞』『とちぎダービー』『しもつけ菊花賞』を制したクラシック3冠馬だった。
私は2頭とも生で観ていないんですが、なるほど、栃木競馬を代表する馬として相応しい馬達ですね。
3冠馬といえば昨年のフジエスミリオーネがクラシック3冠馬に輝いたのは記憶に新しいですね。話は若干それますが栃木競馬における歴代のクラシック3冠馬は下記の4頭となります。
栃木競馬のクラシック3冠馬
年
馬名
レース
04'年
フジエスミリオーネ
宇都宮『北関東皐月賞』 宇都宮『北関東ダービー』 高崎『北関東菊花賞』
99'年
ベラミロード
宇都宮『しもつけ皐月賞』 宇都宮『北関東ダービー』 宇都宮『しもつけ菊花賞』
91'年
カネユタカオー
宇都宮『しもつけ皐月賞』 宇都宮『とちぎダービー』 宇都宮『しもつけ菊花賞』
86'年
サラノオー
宇都宮『しもつけさつき賞』 宇都宮『とちぎダービー』 宇都宮『しもつけ菊花賞』
蛇足ながら98'年のミナミノイーグルは『しもつけさつき賞』『高崎ダービー』『しもつけ菊花賞』『北関東菊花賞』を制している変則4冠馬かな。現在の様な北関東クラシックの統一された路線がまだ整備中の時期だったからね。
栃木競馬にゆかりのある馬名をつけた特別戦は一開催前
(第21回開催)
から今開催まで続いており、上記以外に登場した馬の名はオオタワラ、グランドカリム、ホマレスターライツ、キタノハーモニー、スターダンス、ハシモトキング、オリエントハンター、カルラネイチャー、ベラミスキー。往年のファンにとっては懐かしい馬の名前もあることでしょう。
<第9R>タケデンマンゲツ特別(B2)1500m 着順
順
馬名
騎手
タイム
人気
1
トーアヴイゴール
平沢則雄
1.40.7
1
2
イノセントアピール
野澤憲彦
1馬身1/2
7
3
シュウカクラウン
森 泰斗
2馬身
10
4
フュージティブ
水野貴史
クビ
5
5
スクオールコンドル
山口竜一
1馬身1/2
9
<第10R>サラノオー特別(A1A2)1500m 着順
順
馬名
騎手
タイム
人気
1
ヤマヨダイナミック
早川順一
1.39.0
2
2
レッツゴーフジ
水野貴史
6馬身
1
3
ミヤマリージェント
丸山侯彦
2馬身
6
4
ニチドウマジック
平沢則雄
ハナ
5
5
ブラックベス
藤江渉
5馬身
7
特別2鞍は平沢則雄騎手・早川順一騎手の両ベテランが決めた。平沢騎手はタケデンマンゲツの主戦騎手だったので「よっしゃ!」といった気持ちでのゴールだったのでは。
昨年末で廃止となった同じ北関東の高崎競馬から水野貴史騎手と丸山侯彦騎手が本日のレースに騎乗していた。両者は高崎競馬では毎年リーディングの1位と2位を争っている名手だったが、やはりここでは地元とは違い十分なバックアップが得られないこともあり、当然といえば当然だが高崎競馬があった時の様な成績は挙げられていない。しかし、前開催終了時点で両者ともリーディング10位に食い込んでいるのはさすがである。
第5回北関東弥生賞(宇都宮優駿)
条件:サラブレッド系3歳・定量
距離:1900m 1着賞金150万円 (晴れ・稍重)
枠
馬
馬名
斤量/性齢
騎手
所属
1
1
ワンピース
54.0/牝馬3歳
早川順一
宇都宮)佐藤
2
2
レッドジャスパー
56.0/牡馬3歳
野澤憲彦
宇都宮)室井
3
3
エキスパートランナ
54.0/牡馬3歳
平沢則雄
宇都宮)木村
4
4
ヒラマサファースト
56.0/牡馬3歳
山口竜一
宇都宮)佐藤
5
5
ミヤマアンバー
56.0/牡馬3歳
山田博美
宇都宮)長島
6
6
ブルーリージョン
54.0/牝馬3歳
水野貴史
宇都宮)川原
7
7
ジーエスコンコルド
56.0/牡馬3歳
森 泰斗
宇都宮)仁岸
8
ゴールドグレース
54.0/牝馬3歳
内田利雄
宇都宮)室井
8
9
ギャラントタイム
54.0/牝馬3歳
鈴木 正
宇都宮)中村
10
ケージーオトメ
54.0/牡馬3歳
丸山侯彦
宇都宮)岩渕
メインレースは3歳馬達による初の重賞
さてメインレースは明け3歳馬達による初めての重賞レースとなる『北関東弥生賞』であります。
2歳チャンピオン決定戦『かもしか賞』からの成長度が問われ、そしてこれから始まる北関東クラシック戦を占う点で重要なステップレース。当初足利競馬場で行われていた番組を宇都宮競馬場で引き継いだ形で行われている。
ヒラマサファースト
残念ながら今年このステップレースから当地でのクラシック戦へとつながる路線はもはや無い。パドックで馬が周回するのを観ている時、地元の人とおぼしきオジサンの話し声。「ホントはここで勝った馬が皐月賞だ、ダービーだ、って進んで行くんだけど。折角ここで勝っても後何も無いんだよな。」と、ぽつり。
出走させている関係者側からすると「これが俺らにとっては北関東ダービーだ。」という気持ちで送り出しているのかもしれませんねえ。
メンバー的には『かもしか賞』
(04'宇都宮)
の優勝馬不在で混戦模様であるが、『かもしか賞』2着だった
ヒラマサファースト
が1番人気。『かもしか賞』は勝ったバトルノホシには3馬身ちぎられたが、その後も4戦3勝2着1回と連を外しておらず堅実な走りが支持を受けているようだ。
元々のデビューはホッカイドウ競馬で6走して2着3回、3着2回、着外1回。『かもしか賞』を優勝したバトルノホシもホッカイドウ競馬からの転入馬だった。まあ、今さらの話では無いんだけど南関東含めて関東でのホッカイドウ競馬からの転厩馬の活躍には目を見張るものがあるよね。裏を返せばそれがホッカイドウ競馬の不幸でもあるんだけど。
ゴールドグレース
2番人気は牝馬の
ゴールドグレース
。12戦して5勝、2着3回、3着1回。掲示板を外したのはJRA中山に遠征した時だけだから安定感のある一頭でしょう。
室井康雄厩舎はこのゴールドグレースとレッドジャスパーとの2頭出し。レッドジャスパーといえば母はベラミスキー。今さら説明の必要もないご存知ベラミロードの母。厩舎ゆかりの馬にエース内田利雄騎手が乗らないということになると。。。ゴールドグレースへの期待度の高さが伺い知れます。
3番人気は牝馬の
ケージーオトメ
。2走前の特別戦ではヒラマサファーストを完封しており一発を秘める。4番人気
ジーエスコンコルド
は前走ヒラマサファーストと差の無い2着。5番人気
ワンピース
は先行力を生かしてどこまで、といった感じだろうか。
【北関東弥生賞 過去回の優勝馬】
回
実施日(開催地)
優勝馬
所属
騎手
4
2004.3.8(宇都宮)
フジエスミリオーネ
栃木)仁岸
平沢則雄
3
2003.2.23(足利)
エマージングライト
高崎)川嶋
水野貴史
2
2002.3.3(足利)
タイガーダンサー
栃木)木村
山口竜一
1
2001.3.18(足利)
ヒカリシュタイン
栃木)中村
鈴木 正
スタート!
宇都宮競馬場の1900mは向正面からのスタート。向正面の背景には遊園地とちのきファミリーランドの観覧車がそびえるお馴染みの風景。珍しいものがあるゾってことで物見してしまう遠征馬もいたとか、いないとか。なんて考えているうちにメインレースのスタートが切られた。
ワンピース、ミヤマアンバーあたりがそろそろっと先行。人気のヒラマサファーストはやや出遅れ気味に見えたが、いつもの競馬なんでしょうか?後ろから3頭目あたりを進む。
1番人気が後方を進んでいるのと、1900mという距離を意識してもあるのかな?人気どころはあまり前に行かずやや控えめな位置取り。縦長の展開で進む。
緩い流れだったが、2週目の3〜4コーナーあたりから各馬加速が加わり先行集団と後続集団の差が詰まってくる。
直線向いて早めの仕掛けで内を抜け出して来たのがケージーオトメ。直線で失速しつつあるミヤマアンバー、ワンピースあたりを抜き去り単独先頭へ。
後続を離しにかかるケージーオトメだったが、外からエンジンのかかった人気のヒラマサファーストがじわりじわりと伸びて来て強襲。
2頭のきわどいゴール前の競り合いとなったがヒラマサファーストが1/2馬身だけきっちり差し切った。
ヒラマサファースト、外強襲!
第5回北関東弥生賞 結果
順
馬名
騎手
タイム(差)
人気
1
ヒラマサファースト
山口
2.10.6
1
2
ケージーオトメ
丸山
1/2馬身
3
3
ゴールドグレース
内田
7馬身
2
4
レッドジャスパー
野澤
1/2馬身
7
5
ジーエスコンコルド
森
3/4馬身
4
(払い戻し)
単勝【4】260円
複勝【4】110円/【10】140円/【8】120円
枠番連複【4-8】350円 馬番連複【4-10】450円
馬番連単【4-10】760円
ワイド【4-10】230円/【4-8】190円/【8-10】220円
三連複【4-8-10】400円/三連単【4-10-8】1810円
『北関東弥生賞』最後の優勝騎手は山口竜一騎手。私の山口騎手に対する印象は「度胸の座った大物食いの勝負師」。『北関東ダービー』
(含む『とちぎダービー』)
を4度優勝
(00'オリエントハンター、97'ナスノステージワン、92'ニシノリッチ、91'カネユタカオー)
、『とちぎ大賞典』は2度の優勝
(00'オリエントハンター、91'カネユタカオー)
。玄人受けする大仕事の出来るジョッキーですかな。
馬券は相変わらずの下手で、1着馬と3着馬の組み合わせは持っているんだけどケージーオトメが抜けだわ。
さて、私にとっての最後の宇都宮の馬券だ!と飛び込んだ最終レースもきっちり外して
(結果1着と3着、またか。。。涙)
本日の競馬は終了。馬券は当たらずだったが楽しめた一日だった。
宇都宮競馬には思い出が一杯だ。名勝負、名馬、名ジョッキー、迷実況(?)やら。地元の餃子屋で皆で舌鼓を打ったアフターも含めて楽しい思い出が浮かんで来る。そんな宇都宮競馬の思い出も今日で途切れることになる。宇都宮競馬で活躍した騎手や馬達にはどこかの競馬場でまた会えたら嬉しいな。
内田利雄騎手はどこの競馬場にも所属しないフリーの騎手として認めてくれるよう活動しているそうだ。仕組み的に認められても、各主催者が門戸を開いてくれるかどうかはわからない。厳しい道は続くかもしれないが、でも頑張って欲しい。
さようなら、宇都宮競馬。数々の思い出をありがとう。
<<宇都宮競馬の沿革>>
1933年 競馬場設立 栃木県馬匹畜産組合連合会によって第1回宇都宮競馬開催
1948年 栃木県主催第1回宇都宮競馬開催
1980年 年度間最多発売記録約344億(昭和54年度)
1998年 単年度終始において初めての赤字
2000年 足利競馬以外の場外発売開始
2001年 宇都宮・足利・高崎競馬の連携を強化した北関東HOT競馬を開始
2002年 宇都宮市営宇都宮競馬廃止(平成13年度末)/ 栃木県競馬検討委員会設置
2004年 県営宇都宮競馬を平成16年度末で廃止することを決定
2005年 県営宇都宮競馬廃止(平成16年度末)
宇都宮競馬場
(住所)栃木県宇都宮市西川田町2-1-1
(交通)
■JR宇都宮駅からバス30分
■東武線西川田駅より徒歩6分
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